2011年2月15日 09:00
大好きな椅子をご紹介します。今から20年ほど前になりますが、使うのが目的ではなく身近において楽しむために買った小さな椅子です。当初はもっと白木っぽい色だったのですが、時間の経過とともに味わい深い色になっています。素地を生かした木製の椅子はこんなところも魅力です。
アルヴァ・アアルト「65チェア」です。この椅子を見ているとなぜか優しい気持ちになります。
最近はいろいろなところで目にしますから、みなさんにも馴染みの椅子ではないでしょうか。フィンランドの建築家アルヴァ・アアルト(1898~1976年)がヴィープリの図書館(1935年完成)のためにデザインした椅子のひとつです。今から80年ほど前の作品ですから、このモダンなデザインには驚かされます。
背もたれが特徴の椅子です。素朴でハイセンスなデザインに古さは感じません。
このシンプルな木製の椅子はフィンランド産のバーチ(樺)材を素地のままで使っています。安価で大量に生産できるよう、木ねじと接着剤で簡単に組み立てられるデザインにしたといわれています。アアルトの優れているところは、家具材としては柔らかすぎるフィンランドの木材を積層合板と曲げ技法を開発して、全く新しい手法で堅牢な家具を作ったことにあります。無垢材の端部を曲げた、椅子やテーブルの脚は「アアルトレッグ」といわれ世界で唯一の製法として特許を取っています。この椅子は座面と脚の接点付近が曲がっていますが、側面からみるとその製法が確認できます。当時、産業らしい産業がなかったフィンランドに家具産業を興し、それが現在までも続いています。この椅子は東京では南青山のセンプレデザインで見ることができます。
アアルトの代表的な住宅が数多く掲載されている写真集。
アルヴァ・アアルトはフィンランドでは紙幣に顔写真が載るほどの国民的な建築家でした。
公共建築だけでなく、住宅などの多くの作品を設計しました。いまでも世界中の建築家に愛され尊敬されています。
住宅のリビングの写真。この写真をみて驚くのは、現代にも通用するモダンなインテリアです。
ある住宅の外観、シャープな屋根のラインがアアルトらしいところです。
アアルトの建築や家具は「洗練されたデザインと人間らしい温かさ」にあふれていて、心を奪われます。
2010年10月 1日 09:00
日本の家庭ではダイニングルームは食事をするだけの場所ではなく、家族の団欒の場所になっています。西洋ではダイニングルームは食事をするだけの場所であり、食事が終わると全員がリビングに移ります。さて皆さんのご家庭はどんなスタイルでしょうか。今回はリフォームでダイニングテーブルを造りつけた事例をご紹介します。
「滴の形をしたテーブル」円形は沢山の人が座れて便利
昔の茶の間を思い出してみてください。寅さんの映画の場面でもそうですが、茶の間(現代ではファミリールームと言う)の中央にちゃぶ台があって、そこで食事をしたりお酒を飲んだり、お茶を飲み、新聞を読んだりしていました。最近ではちゃぶ台こそ無くなりましたが、食卓テーブルに座ってテレビまで見ています。
日本の家庭の団欒は、床座か椅子座の違いこそあれ、食卓に始まって食卓近くで終わっているように思えます。これは昔も今もあまり変わってはいないのではないでしょうか。
「リビングボードと一体のテーブル」まさにファミリールームに溶け込んでいます
したがってダイニングテーブルやその周辺がとても大事なのです。
ダイニングを設計する時にはまずキッチンとテーブルの関係を大切にします。あまり遠すぎると歩く距離が長く不便ですし、近すぎると食事をする際に落ち着きません。ダイニングテーブルに座ったとき、周囲の環境が食事スペースとしてふさわしいかどうかと考えます。それぞれのご家族にあった「団欒ができる快適な環境」を作ることは、リフォームをご提案するうえでとても大切なことだと思っています。
テーブルはキッチンの収納から繫がっているが、壁の一部があるため座った位置からキッチンは見えない
ダイニングテーブルを家具や壁の一部に造りつけると、インテリア的にも統一感が生まれ美しいのです。置き家具をいろいろ買い揃えるのが苦手な方にはおすすめの方法です。
2010年8月20日 09:00
日本ではいま北欧ブームのようです。
2006年に家具と生活関連用品を扱うスウェーデンの会社、「IKEA/イケア」が船橋、神奈川、神戸に大型店を開店したことにもあるようです。イケアの創業は60年前でデザインと機能性を重視した手頃な価格の家具として、世界中で有名になりました。
ここでご紹介するポエングは、1975年に日本人デザイナーの中村昇氏がデザインしたものです。

ポエングは当初、詩を意味する「ポエム」と名付けていたのですが、クッション表面に絞り留めの技法を使っていたため、後にスウェーデン語でポイントを意味する「ポエング」の名に変わったようです。この椅子の素晴らしさはデザイン性と成型合板による剛性と快適性です。クッションカバーは取り外して洗濯機で洗えるのが人気でもあります。この着せ替えの発想の原点は「日本の社長椅子によくあるホワイトカバーだった」というのは可笑しいエピソードです。以来、ポエングは30年間、世界のベストセラーになっています。あの有名な椅子が日本人によるデザインだったとは驚きでした。
実は驚いたことがもうひとつありました。私が「すわり心地ナンバーワンの椅子」としてお客様に20年来、おすすめしてきたダイニングチェアーがあります。
カンディハウスのラベンダーという椅子です。座ると包み込まれるようなホールド感があり、長時間座っていても疲れません。すわり心地の良い椅子を探している方にはぜひ体験して欲しい椅子です。この椅子も中村昇氏のデザインによるものだったのです。
イケアのデザイナーを辞めて日本に帰って来てからの作品です。今ではこの椅子もカンディハウスのロングセラー商品となっています。
こころ惹かれている椅子が2脚とも同じデザイナーによるものだったことを知ったのはつい最近のことです。見た目の美しさと、座り心地の良さは両立可能だということを実感した出来事でした。
2010年7月 9日 09:00
椅子にはいろいろな役割があり、その使われ方でさまざま形が違っています。
今回は「一度見たら忘れられない椅子」を紹介します。
椅子はどこで使うものでも座り心地がよく、たたずまいが美しいというのが大切です。私がこの椅子に出会ったのは、知り合いのマンションにお邪魔したときです。玄関の踏み込みにおいてあったのですが、それ以来忘れられない存在になりました。
「なんてさりげなくて、キュートな椅子だろう」と思ったんです。「どんな使い方をするのですか?」と聞いたところ「クツを履いたり、脱いだりするときに座ると便利よ」とのこと。「クツを履くとき、椅子に座ることなんてあるのかなー」と思ったけれど、あまり可愛いいのでつい座ってみたところお尻にピッタリ。座面は小さいけれど、なかなかの優れものです。なんてったって葉っぱの形をしていて、茎のところを持つと移動をする際にとても便利。4本の脚もふっくらとしていてまるで生きているようです。こんな椅子が玄関に置いてあったら、だれでも腰を下ろしたくなりますよね。
玄関でクツを履いたり脱いだりするとき、不安定な姿勢になるせいなのか思わず片手を壁に添わせたりしていませんか。玄関の壁が手の跡で黒く汚れているのはそのせいなのです。
高齢になってきて、足元が何となく不安定だなと思ったら、玄関に小さな椅子を置くことをおすすめします。
選定ポイントはどっしりしていて、安定感のある椅子が良いでしょう。

この椅子には「はっぱ」という名前がついています。製作者は長野県の家具工房「萌木屋」のオーナーで、阿部さんと言います。作り手が見えるというのも、家具選びのもうひとつの楽しみなのです。