2010年9月28日 09:00
10年ほど前、イギリスに旅行したことがあります。ロンドンの妹のところを家族で尋ねたときのことです。「たまには遠出をしてみよう」と、ロンドンから車で1時間ほどの妹の友人宅を訪ねました。その家はロンドンから高速道路で1時間ほどのところ、ハンプシャー州の田舎町「アンドウェルミル」にありました。地名のミルというのは「製粉機」とか「水車」という意味で、この家は昔、製粉工場を経営していた富豪の家だったそうです。今ではこの家が地名になっています。このブログのトップページにも掲載している家です。

この大きな家に住んでいるのは、家具会社を経営しているご主人と奥様のお二人です。家の中を案内していただいたのですが、小さなホテルくらいの広さはあったと思います。私達は春の日差しの中、奥様の手料理とワインでランチをいただきました。そのとき最初に出していただいたお皿が「青いブドウとクラッカーとチーズ」の盛り合わせで、その美しさに感動したことを覚えています。
どこまでが敷地なのか分からないほど広い庭があり、そこには大きな川が流れていました。書斎から見える景色はこんな感じです。川面に柳の若芽が写りこみ、ありえないほどの美しい眺めです。この家にとって川はなくてはならない存在でした。

川の水は透き通っていて、たくさんのマスが泳いでいました。私もボートに乗って景色を楽しもうと足を掛けた瞬間「ドボーン」と洋服ごと川に落ちてしまいました。たぶん美味しいワインを戴きすぎて、足がふらついていたのかもしれません。ボートハウスの周りには水仙が咲き、新緑の柳とあいまって美しい景色です。でも私はこのとき恥ずかしいやら痛いやらでトホホという気持ちでした。
初めておじゃましたお宅でバスルームを使わせていただいたり、濡れた洋服を乾かしていただき、忘れられない思い出でになりました。奥様は日本の方でインテリアデザイナーの仕事をされていたそうです。古い家をアンティーク家具やモダンな調度品で洗練されたインテリアにしておられました。いくらずぶ濡れになったからと言っても、屋内のインテリアを写真に撮らせてもらわなかったことは今でも残念に思っています。
2010年9月24日 09:00
「木の額縁なのに向こう側が見える」このフレームに出会ったとき、私の胸はときめきました。形はシンプルで飾り気は全くありません。向こう側が見えるのはガラスが二枚入っているだけだからです。ガラスの間に葉っぱが1枚、さりげなく入れてあり、ドキッとするほど新鮮でした。
全体の大きさは13.7cm四方の真四角で、周囲の枠は2.3cmです。フレーム全体の大きさと枠幅のバランスが実に美しく完璧です。この大きさに決まったのは、きっとガラスの間にはさむ「木の葉のサイズ」が決め手になったのだと思います。あまり大きすぎても小さすぎてもバランスが取れません。このフレームは自分がガラスの間に何かを挟まなければ完成しないのです。そして挟んだ物の大きさや形、挟み込んだ配置のバランスなど全て自分のセンスで、よくも悪くも決まってしまいます。面倒くさがり屋の人には、不向きなフレームだと思うほどです。しかし、形のきれいな小さな葉っぱを見つけたら、入れてみようとワクワクするし、自分流のアートが作れるフレームなのです。命ある自然の力を借りて室内に生き生きした世界を作ることができます。花瓶に挿した草花や植木鉢の緑と違って、「瞬間を切り取ったアート」を作っているのだと思います。

夜、スタンドの明かりのもとで透かして見える緑の葉っぱも美しいものです。このように持ち主が参加するインテリア用品はプレゼントに向いているかも知れません。それを使う人のセンスも問われますが「何を挟もうかと考える楽しさ」もプレゼントすることができます。東京谷中町の「いろはに木工所」というお店で買いました。
2010年9月21日 09:00
国立新美術館の近くにこんなレストランがありました。散歩をしていてこの外観が目にとまったのですが、まるでヨーロッパの田舎町にあるような店構えです。「おもしろい!」とすかさずシャッターを切りよく見ると、屋根から大きなケヤキが突き抜けてそびえています。ますます「おもしろい!」という気持ちが抑えられず、店内はどんな感じなのだろうと直撃しました。ビルの1階と温室風に作った前面テラス部分がレストランになっています。ケヤキの木が突き抜けていますが屋根は波板仕上げです。
ここは17年前にオープンした都内唯一の「デンマーク料理店」だったのです。入り口ドアの前には、ワールドカップで見慣れたデンマークの国旗が控えめに揺れていました。私はデンマークに行ったことがないので、インテリア用品を通してしかこの国のことは知りません。私の知識では「工芸に強い国でスカンディナビアデザインの中心的な国」というくらいです。その洗練された工芸デザインには若い頃から憧れていました。
店内のインテリアは無垢の木で腰張りをした典型的な北欧スタイルです。照明器具は全て「ルイスポールセン」で、いろいろなデザインの器具が何種類も使われています。「ルイスポールセン」はデザインもさることながら、高品質な優しい光で人々の心を癒してくれます。食卓テーブル用の椅子はかの有名な「カールハンセン」のYチェアです。食器は驚いたことに「ロイヤルコペンハーゲン」でした。ロイヤルコペンハーゲンの食器はしっかりしていて使いやすく、日本人には大人気です。そのほかデンマークのプロダクトデザインをリードしている「ローゼンダール」のキッチンウエアが数多く使われていました。この有名な製品は全てデンマーク製ですから驚きです。「スカンディナビア」を五感で感じたいと思う人にとって、おすすめのお店です。

私はデンマーク料理がどんな料理なのか知りませんでした。お肉料理もあるようですが、シーフードや野菜を中心にした料理が多いようです。一例を上げるとサーモンのマリネやニシンの酢漬けうなぎのスモークなどが伝統料理のようです。お店でいただいた自家製のパンはとても美味しく絶品でした。デンマークスタイルのオープンサンドは定番で人気だそうです。「また行ってみたい」と思うようなお店でした。
店の名前は「カフェ・デイジー」といい、オーナーはデンマークの方です。
2010年9月17日 09:00
ドアにペンキを塗って、それに既製品のステッカーを貼った事例を見て感動したことがあります。いつかチャンスがあれば私もこの方法を採用してみたいと思っていました。リフォームを仕事にしているせいか「お施主様に感動してもらえることは何かないか」といつも探しています。ペンキは好きな色を選べて、塗り替えるだけで雰囲気をガラリと変えることが出来るので私の大好きな手法です。


西洋では建築の仕上げ材としての「ペンキ塗り」は長い歴史があります。日本では塗装の歴史は短く、明治時代に流行した洋風建築が始まりだったそうです。
ペンキが一般の住宅建築に使われるようになったのは、戦後のことだそうです。日本の建築は古くから「木部は生地を生かして使うのがよい」とされて来ました。私が建築の仕事をするようになった40年前でも「ペンキを塗るなんて邪道だ」という風潮がありました。ドア枠や巾木をペンキ塗りに指定すると大工さんは決まって「本当にペンキ塗るの?」と不満げに聞いてきたものです。私は「ペンキは塗り替えるもの」だと思っていますから、壁にもドアにも好きな色を塗ってその時を楽しんでほしいと思っています。色は建築にとって大きな要素ではありますがもし気に入らなければ、塗り替えてしまえばすむことです。自由な気持ちになれるところが気に入っているもうひとつの理由です。

最初はこのブルーのドアに「既製品のステッカーを貼ってもいいですよ」と言っておすすめしていました。ところがこの方は、ご自分の子供の顔を描いてしまいました。このドアは玄関ホールの真正面にあるドアなので、入ってきたお客様はこの子のお出迎えを受けることになります。
2010年9月14日 09:00
数年前にシドニーに行った際、あの有名なシドニー・オペラハウスを見学してきました。
シドニー・オペラハウスはオーストラリア・シドニーにある20世紀を代表する近代建築物です。設計はデンマークの建築家ヨーン・ウッツオンです。2007年に世界遺産として登録されました。建築を学んだ人でなくても、この建物を知らない人はいないのではないでしょうか。それはシェルを重ねて立てかけたように見えるあまりにもユニークな形にあります。
私もオーストラリアを舞台にした映画や写真で見たこともあり、長い間憧れていました。チャンスがあれば遠くから眺めるのではなく、ぜひ手で触ってみたいと思っていました。あのシェルの部分はどんな材料で作られているのか、構造体はどうなっているのかと興味津々でした。シドニーオペラハウスは、船の上から眺めると美しいと聞いていました。
シドニー市街の周囲にはたくさんの島が集まっていて、そこへの行き来は船が大切な交通機関です。私は宿泊先から市街へは毎日、船で通いました。オペラハウスと優美なハーバーブリッジの風景はまるで絵のように美しい眺めです。オペラハウスは遠くから見ていると海に浮かんでいる、華やかで気品のある花のような建物に見えていました。近づいてみると遠くから見ているのとはまったく違っていて、力強い迫力ある建物です。
建物の高さは183mで一番広いところで120mの巾があります。建物の中にも入りましたが、残念ながらオペラは見ていません。シェルの突端を見上げるガラス張りの下がカフェなので、そこで海を見ながらビールをいただきました。
シェルの屋根部分は白色と淡い桃色の釉薬をかけたスウェーデン製タイルが採用されたそうです。小さなタイルを貼り合せ、一定の大きさのパネル状にしたものを緩やかなカーブの屋根の上に張っていったものと思われます。屋根の形状によって、タイルの方向やパネルデザインは違っています。これはタイル屋根に触れるほど近づかなければ分からなかったことです。
2010年9月10日 09:00
7年前、南青山4丁目の角にガラスのビルが建ちました。それが「プラダ 青山店」です。最初は誰もが「ガラスの大きな箱」が突然現れたと思ったようです。街行く人でこのビルの前を何となく通り過ぎてしまう人はいません。「なんだこれは!」というように立ち止まって見上げています。それほどセンセーショナルな建物でした。7年経った今でも外国人はじめ多くの方が呆気にとられて立ち尽くしているのを見かけます。
この建物はスイスの建築ユニット・ヘルツォーク&ド・ムーロの作品です。構造はS造と一部RCで外壁は特殊ガラス製です。構造設計と建設を担当したのは竹中工務店です。少々専門的になりますが、地震国の日本になぜ「ガラスの箱」のような建物を建てることができたのかを説明したいと思います。
外壁がガラスで出来ている高層ビルを街で良く見かけますが、プラダビルはそれらと構造体が全く異なっています。プラダビルの外観を特徴づけている斜め格子は、単にファサードではなく建物を支持する主要構造なのです。この斜め格子が床と一体となって三角形を構成し、トラス構造となっています。斜め格子構造は海外の高層ビルなどには用いられてきたそうですが、地震の多い日本では不向きだと言われていました。それらを解決できたのが、免震装置の存在です。がっちりしたトラス構造の建物を免震装置でゆらゆらとさせ、地震に対応させているのです。プラダビルでは地下室の下に免震装置が設置されているそうです。
このビルの謎が解けてから写真を撮りに行ったのですが、床と壁の関係がいまひとつ分かりませんでした。
2010年9月 7日 09:00
私には尾道出身の親しい友人がいます。数年前、誘われて尾道を訪問したことがあります。
とても印象的だったのが海と町が一体となっていたことです。どこからでも海が見えて「自分が海の上に立っているのではないか」と錯覚してしまうような不思議な感覚を覚えています。尾道は坂の町として、大林宣彦監督の映画でご存知の方も多いと思います。
ある時、その友人が私に備前焼の花挿をプレゼントしてくれました。尾道市在住の備前焼で有名な佐藤苔助さんの作品です。7センチほどの小さな一輪挿しですが、サザエの形をしていました。備前焼の茶褐色は実に魅力的で特に草花の緑色を引き立てる最高の器だと思っていましたから、私も「いつかは欲しいなー」と思っていました。「尾道の方だからサザエなのだ」と勝手に感動し、その愛らしさに心奪われました。備前焼にあう花はホトトギスだと決めつけそれ以来ベランダで育てています。
私があまり喜んだので、友人は佐藤さんの作品で中央におぼろ月夜が浮かんでいるような中皿をまた1枚プレゼントしてくれました。

備前焼は岡山県備前市伊部地区で盛んであることから「伊部焼」ともよばれています。
鎌倉時代に「落としても壊れない」との評判で実用の器として珍重されたそうです。室町から桃山時代には茶道の発展により茶陶として人気が高まりました。
佐藤苔助さんも「抹茶茶碗」に取り組み多くの作品を出しています。難関で有名な田部美術館大賞「茶の湯造形展」にも入選したと聞いています。
2010年9月 3日 09:00
数年前ある雑誌社の依頼で、マンション住まいのお宅を対象に「インテリアの模様替えの企画」を引き受けたことがあります。家具の配置変え、カーテン、照明器具、観葉植物などのコーディネートなどをして、部屋の印象をガラッと変えて欲しいというものでした。
すでにお使いの家具や調度品を生かしながら、目からウロコが落ちるような変更をしなければいけません。どちらのお宅もそれぞれに、インテリアの好みが違っています。どなたにもご満足いただける仕上げにするのは実に難しい仕事でした。
インテリアを魅力的に見せる簡単な方法は、シンプルな中に何かポイントになるものを採用するのがコツです。そのお宅だけのオリジナリティーがあって、しかも喜んでもらえる方法はないだろうかと考えました。私の思いついたことは、そのお宅のお子さんに思いつくものを自由に描いてもらうと言うことでした。

絵が苦手なお子様でも、この手法であれば楽しんで書いてくれます。私が用意したのは、キャンバスとアクリル絵の具(乾燥が速いから・・・)です。最初にキャンバス全体にベースの色を塗っておきます。ベースに塗る色は、部屋のインテリアにあわせて選びます。乾いたところでお子様に白色の絵の具を渡し、太い筆でのびのび自由に絵を描いてもらいました。
その絵は想像していたよりも格段に素晴らしい出来上がりでした。お子様の絵はどちらのご家庭にとっても微笑ましく、暖かい気持ちにしてくれるものです。しっかりした厚みのあるキャンバスを使うことで、存在感のある力作に見えるから不思議です。そして世界中どこに行っても買うことが出来ない、ただひとつの絵が生まれたのです。